前回はタイ、アユタヤの菩提樹について書いたが、
やはり巨樹、巨木で一番衝撃を受けたのは、日本の屋久島。
今回は、約十数年通い続けた屋久島で出会った巨樹の数々を紹介したい。
まずは、屋久島の地形について。
鹿児島から約60㎞南にある鹿児島県屋久島は亜熱帯の小さな島だが、地上から一番高い山、宮之浦岳までの標高差はなんと1936m。
この約2000m級、九州最高峰の宮之浦岳を中心に周りを前岳が囲み、ほぼ円形の島の外周部分に島民が住んでいる。
植物は標高に応じて育つ種類が変わる。
そのため、この島には高山植物から亜熱帯植物まで驚くほど多種の植物が存在することとなり、特に日本の寒冷地帯に育つ植物の中には、屋久島が分布の南限になっているものも多くある。
山の上では雪が降っているのに、麓ではハイビスカスや芙蓉の花が咲いている…という光景は、もう屋久島の冬の名物。
<標高の高い位置に存在する屋久杉と深い森>
・仏陀杉
屋久島で大きな杉の木を見に行くには、地上付近にある登山道から大きな杉の生える標高500~700mほどの所まで森の中を登山するか、
車で山道を登り、屋久杉ランド、白谷雲水峡などの木道で整備された森まで行く。(木道は手前のみで、奥に森を散策できる登山コースが続く。)
または同じく車で山道を登り、ある程度標高のある位置に用意された登山口から登山をスタート。
縄文杉などはこのルートが一般的で、登山口からで往復10時間ほど掛かるので、登山初心者には修行のようなコース。
さて、そしてこの仏陀杉だが、この樹は屋久杉ランドの木道沿いで見られる屋久杉。
屋久杉とは約1000年以上たった巨木の事を指し、それ以下は小杉と呼ぶのだが、小杉でも十分大きいものがたくさんあるので表記されていないと差が分からない。
幹のうねりやこぶ、木肌がかさぶたの様になってい所など、長く生きた重みを感じる巨木。ただかなり弱っているそうなので、触らずに見るだけで感じてほしい樹。
・・屋久杉の森について・・
このスケッチは、屋久杉ランドや白谷雲水峡の奥にある森。
岩々や倒木は苔に包まれ、光の当たるところには若い杉が育ち始める。
屋久島の森では、激しい大雨や台風で巨樹は倒され、空が開いたところに光を好む杉が新たに芽を出す。
よく倒木の上に芽を出したりしてかわいらしいが、いずれその倒木を包み込むほど大きく成長し、森の世代更新をしていくことに。
このスケッチをしている時は、自分にも苔が生えてくるのではないかというほど、緑の世界に入り込んで描いていた。
気付いたら、少し後ろからヤクシカに眺められていたことも。
<麓の亜熱帯植物>
・何が何だか、猿川のガジュマル・
次は山から下り、島の外周部分の亜熱帯気候に生える巨樹。
ほぼ円形の屋久島には、島の輪郭を描くように道路が走っており、その外周から山の方へ登っていく道がいくつも伸びているわけだが、外周道路付近のあちこちに、沖縄などでよく見るガジュマルやアコウの巨樹が存在している。
スケッチのガジュマルは、道路から中の林へ入ったところにあり、木根が好き放題に伸び、もうどこから始まっているのかも分からない。
この樹種は絞殺木と呼ばれており、支えとなる別の木に木根を絡ませ、いずれは絞め殺してしまう。巨木にもなるが、大元の幹の中には支えとなった別の木がある可能性も…。
・・人と生活を共にするアコウやガジュマル・・
この巨樹たちは、民家や道路の脇にどしんと根を張り葉を広げ、屋久島の暑い夏、人々に木陰を提供してくれる樹。
本州でいうと、クスノキのような存在。
初めてこのアコウの木を集落の道路脇で見かけた時は、あまりのインパクトの強さに怖さすら感じたが、この樹は学校などにも生えており屋久島の方たちには当たり前の存在。
・・・浜辺にて・・・
これはおまけスケッチ、流木。
屋久島の海はダイビングにも適した美しい海で、浜辺には流木やサンゴのかけらが多く見られる。
山から海まで堪能しようよしたら、最低一週間は滞在したい島。
島のほとんどを山で占める屋久島には、昔から山岳信仰があり、宮之浦岳を囲う前岳の麓の集落では、自分の集落から見える山をそれぞれ崇めてきた。
なので、その神の領域である奥山に育つ屋久杉を伐採することはなかったのだが、それも江戸時代になると特別な建築の資材として、大量の伐採が始まる。
今残っている1000年以上の屋久杉は、その時代に建築資材としては使いにくかったものが切られずに済んだともいわれている。
今は世界遺産として守られるようになり、それゆえに人が大勢山に入ることでの弊害も生まれてきてしまっているが、巨木をはじめ、自然全体を大切にしていきたい島。