お釈迦様ではないけれど、大樹の下で深呼吸がしたい。
学生時代、スケッチブック片手にリュック一つで九州~屋久島を旅して以来、すっかり大樹の虜となり、樹木に会いに行く旅をするようになった。
寒さに弱いせいか西の方にばかり興味があったので場所に偏りはあるが、出会った大樹について書いてみたいと思う。
まずは、そこまで興味はないが巨木には定義があるようなので、一応触れておく。
1988年、環境庁(現・環境省)が発行している「日本の巨樹・巨木林」リストより。
巨木は国や都道府県の天然記念物に指定されているものも多いので、守るという意味では貴重なリスト。
規定サイズは、地上130㎝の位置での幹周りが300㎝以上、
全国で巨木になるのが多い樹種は、
1位 スギ 2位 ケヤキ 3位 クスノキ
4位 イチョウ 5位 シイノキ。
この辺の種類は、神社に行くと神木にされ大切に祀られているものも多い。
それもそのはず、巨木の所有者の約60%が神社だそう。
特に街中で巨木にまで成長するには、人や社会の手助けが必要不可欠ということ。
そして面白いのが、高知や南九州の方に南下していくと巨大化してゆく5位以降の樹種。
それがアコウやガジュマルなどのクワ科の樹木。
この樹木は大変不思議な木で、太い枝から木根をいくつも下に伸ばし、地面に着地。
巨木になるともう樹形はぐちゃぐちゃで、どこから生え始めたのかも分からない。
屋久島でスケッチをしていたころは、森の立派な杉の巨木を描き終えた後は集落に降り、あちこちの家の脇に生えているアコウやガジュマルの大木を描くことに夢中になった。
本州の学校や公園では桜やケヤキ、イチョウが多いイメージだが(あくまで日本の西寄り)、これが屋久島より南になると、校庭にガジュマルやアコウというのがお馴染みとなる。
南の島の子供は、こういう木に木登りして育つのだろう。
気候の違いは、育つ環境に大きく違いが出てくる。
巨樹に会い、その育った年月を思うと、自分がとても小さく見える。誰にでも、昔から自分を見てくれているような樹が一つはあるのではないだろうか。
大きなまっ黄色のイチョウの木の下をくぐって毎日通学した人、
神社の御神木のくすのきの前に深呼吸をしにいく人、
ガジュマルの木根にぶら下がって友達とターザンごっこをした人…。
森の中の荘厳な巨樹、生活の場のちょっとはずれにドスンと座っている巨樹、どちらもその前に立って樹木の歴史と自分の歴史を一体に感じられた時、
地球に住んでいる不思議さと面白さを味わえる気がする。