
「鳥の子色」
これは、平安時代からある日本の色の名です。
さて、何色を思い浮かべますか?。
鳥の子供…ひよこの色?。
実はこれは鳥、ニワトリの卵の殻の色。
肌色よりは薄い、黄色を指しています。
今のスーパーの卵売り場で売っている真っ白な卵は、白色レグホン。
これではありません。
昔は、写真にあるこの淡い黄色が、卵の殻の色。
英語では、この色はそのまま「egg shell」といいます。
日本の繊細な色彩感覚は、着物文化と共に育ち、言葉の表現にも美しく現れます。
鳥を由来とする話が前回から続いたので、鳥の美しい色をもう少し。
有名ですが、実物の鳥が見れなくなってきたものです。
朱鷺色(ときいろ)…女性の和服によく用いられた淡いピンク色。
翠色(みどりいろ)…カワセミの羽のような青い緑色。
どちらも、昔からその鳥の羽が装飾品として使われるほど美しい色です。
私は10年以上前、屋久島でカワセミを生まれて初めて見ましたが、遠目で見ても分かるぐらい美しい青が、川辺をスーッと横切っていきました。
それは、スケッチをしようとポイントを探していた瞬間。
思いもよらなかった青が、突然、飛び去ったのです。
感動のあまり、しばらく筆を握る気にはなれませんでした。
古来からの鳥の色をもう一つ。
「山鳩色」という、灰みの緑色があります。
山鳩とは、山に住む青鳩の説と、今でも街で見られるキジバトの説があり、青鳩の方が黄色味の強い緑色です。
この色は平安時代、天皇だけが着用できた「禁色」でした。
昔はもちろん今の化学染料などありませんので、全て草木染です。
今の草木染作家の方に聞いても、着物を染めるのに、最低三回は染めないと色がしっかり定着しないと言います。
刈り込んだ植物を煮だして染料にして、生地を染めて乾かして×最低三回です。
濃く染めるにはその分回数が増えるため手間が掛かり、そのため濃い色ほど禁色の位は高くなっていきます。
古来からのはっとする芸術的な美しさは、国が守ってきたからこそ続いているものも少なくありません。
政治と絡み、宗教と絡み、それでも芸術は今の現代の人を感動させる美しさがあります。
自然と人間の融合的な芸術を、後世にも伝えていければと思います。
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